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第3回『ムツアナ』

ムツアナ【RPGツクールMV作品

制作者:莞爾の草(Kanji the Grass)さん

Title

『ムツアナ』は不思議な世界観をもつ脱出アドベンチャーです。ゲームを始めると、そこは暗闇。身動きはできず、身体のパーツの付け替えができる(!?)ことだけがわかります。そこで唯一選択可能な「モグラのアタマ」をつけることで周りが見えるようになります。両手、両足がなく、頭部もない胴体だけの存在。実はこれがプレイヤー(の姿)なのです。
周囲に落ちている動物の死体(パーツ)を自身の胴体に装着することで、さまざまな能力、行動が可能になります。明確なストーリーは語られませんが、独特の雰囲気に想像力をかき立てられます。集めたパーツを駆使してギミックを解き、先へと進むゲームサイクルが成立しており、トライ&エラーが楽しい脱出ゲームです。

ニコニコ自作ゲーム文化祭 RPGツクール賞受賞作品

制作者:莞爾の草さんへの質問

  1. このゲームを作ろうと思ったキッカケは何ですか?
  2. Steamにゲームを公開(*1)したことがキッカケとなり、フリーゲーム作者とインディーゲーム開発者の境目で反復横跳びしている間に作りました。
    フリーゲームは自分が作りたいものを好きなように作ることができて、プレイヤーもその作者の味を楽しむ構図で需要と供給のバランスが保たれている印象があり、対してインディーゲームは有料のものが多くビジネス的な側面が強いのでキャッチーなコンセプトやビジュアルがなければ遊ぶ以前にダウンロードしてもらえなくなるという先入観があり、Steamに公開してからはその考えがより確信に近づいていました。
    作りたいものと遊んでもらえるものに葛藤しスランプに陥っていたとき、マンダラチャート(*2)というアイデア発想法を使い、それらの折衷案になる『ムツアナ』というゲームができました。


  3. このゲームで一番見てほしいところを教えてください
  4. 「死骸を纏い先に進む」というコンセプトの通り、ムツアナは動物の死骸をまとうことでできることが増えて先に進むことができます。
    RPGにありがちな「最初に行けなかった場所が後から来られるようになる」という楽しみを一時間弱のプレイ時間の間に味わっていただければと思っています。
    またこのゲームには2つのエンディングがあり、どちらもショートショートのSFのような読後感のあるものになっているので、謎解きが苦手な方もブログの攻略情報(*3)を見ながらでも遊んでいただければ幸いです。


  5. いままでに影響を受けたゲーム、好きなゲームを教えてください
  6. 最初に『RPGツクールVX Ace』を購入したキッカケは『青鬼』や『魔女の家』など当時ニコニコ動画で流行っていたフリーゲームで『ムツアナ』を作る際にも影響を受けていました。
    また、主人公の状態が変わることで進めるエリアが増える探索ゲームという点で、同じくフリーゲームの『ゆめにっき』にも強く影響を受けていました。
    本作以外で自分が作ったゲームだと、FF6やドラクエモンスターズシリーズ、フリーゲームでは「Re:Kinder」などから強く影響を受けていて、好きなゲームでもあります。


  7. ゲームを作るときに、いつもこだわっていることを教えてください
  8. 作品の完成を目標とせず、自分が楽しみ、学びながら気長に作るようにしています。

  9. ツクールを使ってよかったなと思うことをひとつ、教えてください
  10. 私の場合、中学時代不登校のとき登校出来ない時間をツクールに割いてきましたが、それが結果としてプログラミングにつながり自分の強みになりました。
    <それ以外にもSteamへの公開や、デジゲー博というインディーゲーム開発者のための展示イベントに出展できたこと、国内外のツクール ユーザーの方々と技術提供や情報共有などで交流できたことは他ならぬツクールシリーズのおかげでした。


    *1 Steamに公開したゲームのストアページ

    *2 Excelで作成したマンダラチャートの図(記事下部)

    *3 ムツアナの攻略情報

ツクールチームコメント

ニコニコ自作ゲーム文化祭のコメントでも触れましたが、死体のパーツを組み合わせてさまざまなアクションを身につけられる、その着眼点がすばらしい作品でした。プレイヤーが胴体だけの存在という異色の設定は、ホラーの印象を受けつつも、身体のパーツを自由に取り替えられるユニークなシステムに昇華されており、そこにゲーム独自のUXが生まれています。創作における重要な要素は、アイデアの発明と発想の転換にあります。他のクリエイターが思いつかないことを思いつくセンスも才能のひとつです。本作は、とてもユニークな発想力をもった作品でした。

<注目ポイント>

プレイヤー=胴体!?
普通、パーツを交換して自身をパワーアップ! といったゲームシステムを考えるとき、最初に思い浮かぶのはロボットやサイボーグのような機械のボディ。それが生身となると、とたんにミステリアスに。プレイヤーは自ずと「自分はいったい何者なのだろう」とプレイに動機を見つけることができます。ゲームの最初に大きな謎を用意することは、とてもとても大事ですね。

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